あかね噺、1シーズン12話はひとまず完結だ。
他の配信は知らないが、TVer(タダ)では6月30日まで全話視聴できる。
さて、可楽杯を優勝したあかねは、ご褒美に阿良川一生と対談できることになり、おっとうの破門の理由を聞き出す。
マンガ全体を見たときに、この理由はどうやら取って付けたウソらしい。
マンガ連載でも破門の理由はぶり返したまま、解決してないんだって?
私がマンガを15巻でやめたのも、これが大きな理由のひとつ。実際の落語界に存在しえない破門理由を作り上げても、絶対納得がいかないだろうと思ったからだ。
「破門」は、師弟関係を解くだけではない。多くの場合、落語家廃業となる。
芸人としての死刑宣告だ。
一生の説明する理由がそもそもおかしいし、真の理由(架空のものとならざるを得ない)など、さらにおかしい。
いいところの多いマンガであり、アニメなのに、「阿良川流の真打になるのが目標」ともども、この二つのテーマが全体像をぶち壊してしまっている。
架空理由の破門は、現実の落語界と共鳴し得ない。
阿良川一生の話はでたらめだ。もっともらしいことを言ってるが、現実の観点からはまるっきりウソなので感心しないように。
落語界は今でこそ900人いて、大盛況。しかし、ずっと細々とやってきた業界だ。
現在の浪曲あたりを見てみれば、本来規模がいかに小さいかは容易にわかる。
そんな世界においては、「数」は非常に大事なのだ。
落語が少々ヘタでも、母数をかさ上げするための人員は絶対に必要。
そもそも、「落語がヘタな奴を落っことして全体のレベルを上げよう」なんて発想そのものがない。
破門されるとしたら、実力に基づくものは、まず聞かない。
あった破門は、「あまりにも無礼」「芸人の筋を違えた」とか、そういうのが本来の理由である。
そして、「よその弟子は破門できない」という根本ルールを連載開始時にくつがえしてしまった。
それを取って付けたようにここで取り返している。
「他の一門への移籍」をおっとう志ん太は断ったことになっている。
というか、「移籍を前提とした破門」なんてないと思う。
実際の落語界にあった移籍は、こうだ。
- 破門されたが、よその師匠が拾ってくれた
- クビにするからよその師匠を自分で見つけてこい。口を利いてやる
- 辞めるなら自分で辞めろ。破門届は出さん(訴訟提起により、ようやく破門届が出る)
あかね噺で描かれたのは、こうだもの。
- できもしない、よその弟子の破門
- 移籍のチャンスがあったのに、本人の意思で断った
この物語に感動しろってのは無理だ。
「弟子を破門してない師匠との、感動の別れ」ってのはこの世にないんだって。
自主廃業で、師匠とつながりを保ったままでいる人というのは聞く。
ありもしない架空の設定を積み上げてしまったあかね噺。
しかし、からし君が、古典落語の師匠に弟子入りするのは現実にモデルがある。
これは、新作をやりたかった三遊亭円丈(先代。新作の巨人)が、基本を身につけようとあえて圓生の門を叩いたのがモデルで間違いない。
新作の師匠に入門したって構わないが、古典はちゃんとやりましょう。
古典をちゃんとやらず、立派な新作派になった人などいない。
柳家喬太郎師も、古典の若手であったさん喬師に入門している。
いっぽう、阿良川一剣が、ひかるを弟子に誘っているのはかなりおかしい。
落語界には「弟子なんて勝手に来るもの。誰も来てくれといってない」という言葉がある。
三遊亭園歌のパワハラを是認するどうしようもない芸人もいるわけだが、この言葉が免罪符になっているわけである。
もっとも、6代目三遊亭円楽(楽太郎)は、5代目圓楽(馬の圓楽)にスカウトされて弟子入りしたなんて話もあるので、絶対にウソとまでは言い切れない。
ただ、やはりウソっぽい。
師匠の家で、阿良川まいける登場。
次の12席で、「弟子への名前の付け方」が話題になっているというのに、まいけるの名前の由来は出てこない。
原作にもなかった気がするのだが。
「しぐま⇒まいける」というしりとりかしら。
あかねの優勝を祝し、一門みんなで楽しくかっぽれを踊る。
三味線抱えて「あかねる」と呼ぶまいけるの背後に、亡くなった正楽師匠の紙切り「相合傘」がまた登場。
こういうシーンは好きなのだ。
あかね噺には、噺家と付き合いのない素人が、いろいろ見聞きして得た、一つの体系が矛盾なく描かれている。
だから感心するところも多い。
だから根本的な嘘さえなければ…
寄席で一席やった後で踊る人はいる。
その中で、かっぽれは一番出現の可能性が高いと思う。次は「奴さん」かな。
三味線弾ける噺家はあまり聞かない。ほとんどいないと思う。
実質引退状態にある上方落語家、当代林家染丸師は、お囃子のほうにも弟子が大勢いるすごい人だが、あとはどうだろう。
津軽三味線をやる人なら、林家ひろ木師がいる。
噺家は、楽器やるとすれば、笛が多い。
笛が吹けると、披露目の際に鳴り物を担当できる。落語協会だと、披露目では笛吹きの二ツ目さんが、一門に関係なく高座を与えられるので実益もある。
今秋に抜擢で真打になる春風亭一花さんも笛吹きで、披露目には必ず駆り出されていた。
ちなみに師匠の一朝師は、歌舞伎座でプロとして笛を吹いていた。笛を引き継いだ弟子は一花さんだけみたい。
カメオ出演は来春真打の決まっている林家あんこさん。
最終回は早めに出します。