神田連雀亭ワンコイン寄席50（下・春雨や風子「紙入れ」）

らくごカフェの模様を2日挟んだところで、いったん神田連雀亭に戻ります。
ちなみにこの日のワンコインは、ちょうどつ離れしてました。
この日の客は私と同じく鷹治、風子が目当てで、2番手の人については、知っていて好きじゃない気配が漂う。
アウェイでしたな。あんまりアウェイでテンション上げていかないほうがいい。

ちょうど1年前、2023年の最初に聴いたのが、連雀亭の昼席だった。
その際はトップバッターが風子さんで、2番手が鷹治さんだった。
客3人だったけども。

黒い女着物で登場の風子さん。正月はお着物で移動するのでしょう。
正月の挨拶をして、いよいよ私も真打が決まりました。客、拍手。
「戦いましたよ！」
相手は師匠。師匠と戦って真打になんて、立川流じゃあるまいに。
年功序列で運営されてる真打制度に、ひとり抗う師匠というのもね。
まったくの想像だが、芸術協会としては、師匠が真打を認めないなら他の一門に移籍させて昇進させよう、そんな動きでも水面下にあったのではないだろうか。
風子さんは師匠と戦うたびにくたびれて、マッサージ受けてるそうです。

新しい名前のことは語らなかったが、雲龍亭雨花（うんりゅうていあめか）である。
キャラ被りの桃花がいるのに花である。
亭号が春雨やでなくなると予想したのだが、これは当たった。ただ、天気シリーズではあるので、一門を離れるということでもなさそう。
芸協でも、女流芸人集めて「雨組」をやったらどうでしょうか。二番煎じだけど。

真打昇進はお金が掛かるという生々しい話。
扇子だって1本1,500円する。
そして芸協の場合、3館共通の披露目のチケット2,000枚を売りさばかないとならない。そんなに売れない。

楽屋で話してました。どうして笑点は綾瀬はるかを呼んで、私を呼ばないんでしょうだって。
顔マネコーナーを始める。
芦田愛菜ならぬ芦田ママ、綾瀬はるかならぬ綾瀬はるかかなた。
一番似てると言われてるのは、秋野暢子さんですね。ナチュラルに笑ったところをやります。
これは確かに似ている。

間男は亭主のほうが先に惚れ

「こいつ可愛がってやってくれ」なんて言われたおかみさんが、別のかわいがり方をしたりなんかして。
と紙入れへ。
最近は、女流が好んでやる噺になってしまった感がある。まあ、それはそれで。
男がやるよりいいこともある。作られていない女を噺の中に打ち出すのだ。
同じ芸協、三遊亭あら馬さんのものも、なかなかいやらしかった。いやらしい、は文字通りの意味。

さて、風子さんの紙入れは、いやらしいを通り越し、もうエロい。
エロ熟女落語。なんだそりゃ。
でも、決して下品じゃないのだ。これは風子さんの名誉のため強調しておきます。
桂ぽんぽ娘さんみたいに、女のリアルなエロを打ち出す種類のものではなく。

旦那の留守に貸本屋の新吉を呼び出してご機嫌のかみさん。
新吉は旦那に顔向けできなくて、終わりにしたいと思っている。
かみさんの脅迫がもう、たまらない。女流にとって、この真綿で若い男の首を絞めていく脅迫が、メインテーマではなかろうか。
そして新吉に、卵と鰻を食わせる。まあ、いやらしい。

旦那が帰ってきてもかみさんは冷静。ゆっくりはばかりの戸を開け閉めしてから旦那を迎えに行く。

ほうほうの体で逃げ出す新吉の独白が、他にないものだった。
かみさんに手を付けられたきっかけを振り返る。かみさんに「相撲を取ろう」と言われたのだと。
どういうことかと思いつつ、おかみさんと取り組み合うと、女だてらに力が強く、見事な浴びせ倒し。そこでいい匂いがして。
そんな噺を、客の目をしっかり見て語りこむ。

そんなシーンが入っている分、新吉はぐずぐず考え込みはしないし、逃げ出す算段もしない。
翌朝旦那を訪ねていくと、怒鳴りつけられる。
ごめんなさいとひれ伏すと、「鬼滅の刃はいつ持ってくるんだ！」。あ、本業のほうだった。
ねず子が人間に戻れるかどうかが気になって仕方ないんだって。

新吉の顔色を見ていろいろ察する旦那。
「みつかりましたか」「見られましたか」はウケない。
誰がやったって最近まずウケないけど、みんなやるよね。これは風子さんもやる。
志ん朝の聴いてみたら、なかったけど。

最後にかみさんが出てきて、旦那と新吉の前であっぱれの間男解説。
ああ怖いこわい。

演者を選ぶ演目だが、面白かった。
高座を終えたばかりの風子さん、さっそく玄関に回ってお見送り。披露目のチケットをせっせとアピールしてました。

明日はらくごカフェの続きを。

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