初心者の知りたい落語用語

落語にまつわる検索ワードを眺めていると、たとえばこんなのがある。
「落語をする 言い換え」

高座でもって噺家が語っている。この状態を日本語でなんと言ったらいいのかわからない。
そういう疑問である。

こういうのを扱ってみようと思います。

ちなみに「落語をする」というのは、言葉としてまず見ない。
あるとして、「こんな落語をしようと(やろうと)思ったら〜」ぐらいかな。

「落語を掛ける」なら間違いではないが、ニュアンスが違う気がする。掛けるのは、漠然とした落語全体ではなく、個別の演目でしょう。
「一席務める」か? これもニュアンスが違うな。
「一席お客さまのご機嫌をうかがう」なら?
もう、わけわからない。

落語は観るか聴くか

「笑点の公開収録を観にいく」ならなにもおかしくないが、「落語を観にいく」というと、かなりの落語ファンが軽くずっこけるはず。
まあ、「落語を聴く」は慣用句だと思って使ってください。
ちなみに漢字は「落語を聞く」でも間違いではない。でも軽く違和感。

ラジオにおける落語の雑な扱い

噺家か落語家か

これは、以前書いた。噺家のほうが、通っぽいとはいえる。

落語家か噺家か

だが私個人は、最近はだんだん落語家を多く使うようになってきた。
落語家のほうが、結局のところ汎用性が高いため。
「女流落語家」「上方落語家」とはいうが、「女流噺家」「上方噺家」は実にすわりが悪い。

ちなみに「噺家」もさらに気取って書きたいなら、「咄家」「はなし家」とする。
書いたことないけども。

落語会と寄席

寄席という、頻出の言葉、意外と使い方が難しい。
落語を聴けるスペース全般を指して「寄席」と言いそうな気がするが、それはさすがに拡大しすぎ。
寄席は狭い意味で使っておくほうが無難。
東京の場合、寄席四場プラス永谷ぐらいじゃないかな。
ただ、私ももっと広い意味で使うことも、普通にある。

落語における「寄席」とは(上)

高座と舞台

私にもよくわからない用語がある。
使い方まるっきり間違ってはいないと思うのだが。
寄席において、噺家さんが一席やって、次は漫才師が出てくる。
噺家が喋っていた場所は、高座である。
しかし漫才師が喋っている場所は、舞台である。同じ空間なのに。

舞台、というのはステージ全般を言うと理解している。
そして、舞台の真ん中に座布団を敷いて、これが高座。
高座という言葉の通り、一段高く設えてあればいいのだが、そうでないことも多い。でも高座。
だが、座って演じる紙切り、それから最近の猫八先生のような演芸を掛けている場所は、高座でしょう。
幇間の松廼家八好師匠は座布団外して正座してるが、あれはなんて言うんでしょう。
あえていうなら、「お座敷」?

稽古と練習

知らないと、落語を覚える行為を「練習」と言ってしまうことが多い。
落語界に「練習」っていう言葉は存在しないのではないだろうか。
これはもちろん稽古。
芝居でもすべてそうでしょうね。
漫才だと、稽古でももちろんいいが、練習とも普通に言うようだ。

サゲかオチか

一席の落語の最後のフレーズは、サゲという。
サゲはまさに落語の用語であり、他の芸能では使わない。
だがオチ(落ち)と言って間違いではない。
オチのほうが、意味が広い。マクラの小噺のオチ、などと使ってもいい。
サゲの種類を分類するときは、「間抜け落ち」とか「とんとん落ち」という。
「間抜けサゲ」とは言わない。
まあ、テキトーですな。

見台と釈台

東京落語は通常、座布団の前に座るだけで始められる。
寄席に行くと、それ以外の芸能が出てくる。特に最近はバラエティに富んでいる。
座布団の前に机が置かれる芸がある。

  • 上方落語
  • 講談
  • 浪曲(本来は立ち芸だが、落語の寄席では座る)
  • 膝の悪い噺家(例として柳家喬太郎)

上方落語の台は、見台(けんだい)である。
今度この台NHKで取り上げられますねん。クローズアップ見台。これは鶴光師匠のツカミ。
見台はテーブル状であり、下は開いている。下を隠すために「膝隠し」という衝立てが別途置かれている。
昔は東京の寄席には見台がなかったので、講談の釈台を使っていた。
講談師に借りまんねん。1回500円払て。これまた鶴光師匠。
東京の寄席に見台を導入したのは、瀧川鯉朝師だそうで。

見台も釈台も、ツケを打って音を立てるのは同じ。
講談の場合はさらに張り扇を使う。
なお講談の場合、釈台がないとできないので、地方に行く際は釈台を持っていく。組み立て式だろう。
いっぽう、上方落語は見台がなくてもする。
所作を見せたい噺では、見台は邪魔なのであっても出さない。

浪曲は見台や釈台に、カラフルなテーブル掛けを掛けて使う。
座って演じる浪曲は、まだまだ歴史が浅い。

忙しくて膝を治す隙のない柳家喬太郎師は、すっかり見台または釈台の高座になってしまった。あぐらをかくのである。
ただで転ばないのがこの人のすごいところで、師は釈台の新たな使い方を次々開発中。

  • 音を鳴らす(歌舞伎のツケ打ちのごとく)
  • しがみつく
  • 台の前で穴を掘って、高さを出す

まだ観たことないが、「持ち上げて重さを出す」ってやってそう。

落語に正座は必要か(東京かわら版柳家喬太郎特集より)

 
 

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