このところ、使える時間帯に制限がある。
こんなときこそ、時間帯ぴったりの未知のスポットへ。
以前から興味はあった、蒲田の楽落亭。
柳家あお馬さんの会。この人は1年半振り。
地下に降りるといきなりご本人。
「お待ちしておりました!」
「予約ないんですけど」
「大丈夫です! 予約してても同じ値段なんです!」
やたら元気なのであった。
勉強会なので千円と安い。
毎月第3木曜固定の会だそうな。
神田連雀亭にいた頃、受付の接客ベスト3に入る丁寧な人だと思っていた。
あとの二人は、一花さんと、三遊亭鳳月さん。
こじんまりした会場。ぎゅうぎゅうに詰めたら25人くらい入るのかな。
地下だし、そのうち蒲田秘密倶楽部なんて呼ばれるようになるのだろう。もう呼ばれてるかもしれないが。
なんだか予想外に多い客数だったみたい。16人。
死ぬなら今
大工調べ(上)
(アンコール)大工調べ(下)
大工調べは絶品だった。
最後の一席はアンコール(アンコールなくてもアンコール)なんだって。
時間になるとあお馬さん、元気よくようこそいらっしゃいました! と客の後ろから登場。
こんなにお越しいただいてうろたえてます。
だいたいね、新しい会は、初回がいちばん多いんものですよ。それから、一定の数に落ち着くものです。
この会、初回は11人でしたか。次が6人ですね。
蒲田の人に来ていただこうと思って宣伝していました。
以前も聴いた、地方の健康ランドの仕事。
初めて会ったにもかかわらず、店主がやたらテンション高い。
「あお馬さん、これで世界進出ですね。ニューヨーク公演」
高座は畳の上に座布団1枚。
前日が歌謡ショーだったので、スタンドマイクのエコーがキツい。
終わってからギャラをいただく。微妙に少ない。
健康ランドなので源泉です。
つながってるのかよくわからないが、ケチの噺に。
その名もあかにし屋ケチ兵衛さん。
あかにし(赤螺)でケチ兵衛と、全身ケチな人でございます。
さんざん悪いことをして身代を築いたケチ兵衛さん、ついにいまわの際。
ということは片棒ではなくて、「死ぬなら今」である。
でも、サゲを仕込まない。
ごく普通には、「サゲを先に言う噺があるんですね」と振るところ。
どういう演出なのか。
中盤に来てから、改めて説明。
この噺は「死ぬなら今」と言いまして。
普通、噺を中断して演題を語ったりしませんけど。この噺の場合、「死ぬなら今」という言葉がサゲに関係するわけです。
ぼんやり聴いていただいて、わからなくなっちゃうといけませんから。
冒頭で入れ損ねて、どこで入れようか考えたというのが、私の想像です。
なおあお馬さん、「サゲはこうだ」とは語っていなかった。次の大工調べもだが、実にさりげなく変えてくる人である。
少々変則でも、「死ぬなら今」は結構楽しい噺。
このケチ兵衛さんは片棒みたいに具体的にケチを働いたわけではない。だが悪人とされる側の人。
この悪人が、最後にカネの力で極楽浄土に行こうとするさまは楽しいではないか。
ただ、地噺なので語り口は難しい。
演者があんまり入り込むとすぐぐずぐずになる。
この点、師匠の小せん師は上手い。すべてのギャグを、ウケてもウケなくても構わないテンションで語る。
あお馬さんは、ウケないクスグリを入れ、反応がかんばしくないあとで噺をいったん止める。
でもって、別の小噺(やっぱりウケない)を語り、強制的に客に拍手させてリカバリー。
まあ、師匠とは個性が違ってテンション高めだからかろうじて成り立つ。
ウケないクスグリとは、「地獄はあっちこっち電車が走っている。なのでケチ兵衛さんに、道に迷わないよう乗り換えを書いた本を入れてあげる。これを地獄表といいまして」。
ケチ兵衛さん、地獄でさっそく赤鬼に袖の下を渡して行列の先頭にしてもらい、そして閻魔大王にもやっぱり袖の下の力で極楽浄土へ。
ただしこれは芝居に使う贋金。遺族が「本物の金を百両入れてくれ」とは言われていなかったからだ。
芝居については、「国宝」の監修をした上方歌舞伎の中村鴈治郎に触れる。鴈治郎の得意演目に「封印切り」があり、この際に大量の小判を使うと説明。
一席めについては、今のところ本人のニンではないかもしれないなとちょっと思った。
圧巻の大工調べに続きます。